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「バーバラ」
「バーバラ」
去年、夏ももう終わりかけの頃。事務所から話があった。
「アニメのEDの話があるんだけど、コンペに出してみないか?」と。
コンペというのは、簡単に言えばオーディションみたいなもので、色んなアーティストが曲を出して、たった一つの枠を目指して戦う、といったようなもので。
結果として、おれらが担当することにはならなかったんだけど、そういう話からこの曲は始まった。DAYSというアニメをやらせて頂いた時以来のそういう話は嬉しかった。
普段、自分たちだけで完結しているものが、他のカルチャー、他の作品に関われるというのは本当に幸せなことだし、光栄なことだから、ぜひやらせてくださいとスタッフにも伝えた。そして、早速原作を読み漁り、自分もその世界のモブキャラになりきるくらい没入し、曲を書き始めた。
久しぶりというのもあるけど、何かの作品に対して曲を書くという制作は実にたのしい。自分だったらこの台詞のあとにズバーン!ってこんな歌流れてきてほしい〜みたいな妄想が公式に許された時間だから。
別に普段それをしたって誰も咎めはしないんだけどね。
でもなんか存分にやってください!って環境が心地いいのよね。
この前はこっそり「秒速5センチメートル」を延々流しながら曲を書いてた。
でも、やっぱりどうしても途中から「いつでも探しているよ〜」って歌いたくなってしまう衝動からは逃げられなかった。
はい、戻ります。
とにかく主人公目線、周りの人間目線、様々な人間ドラマを眺めながら曲を書いた。
それを提出し、返事を待つこと一週間。
あまり刺さっていないかもしれない、というスタッフからの話。
普段なら、そうでしたか〜まあご縁がなかったということで。。と切り上げるのだが、その時のおれらには、唯一の希望だった。だからどうしてもその枠を獲りたかった。
もう一曲トライさせてくれ、とスタッフに告げ、すぐさま原作の世界へ。
そして泳ぎきること、これまた一週間。もう一曲が完成した。
それが「バーバラ」だった。
結局、他のアーティストが選ばれ、おれらが担当することが出来なくて、それはそれは悔しかったけど、それでもこの短期間で2曲出来たのは大きかった。
これはいつかアルバム入れようなって言ってた曲が、半年経って入っているんだから、あの時の自分を褒めたい。ちなみにもう一曲は去年の11月、渋谷WWWのアンコールで演った曲でした。この曲もまたいつかの未来で。
そしてアルバム制作へ。
「バーバラ」のフルコーラスは出来ていたから、歌詞を書く。
初めはドロッドロの浮気の歌だった。すっごい浮気されてた。
曲を聴いてる中でそんな気持ちになったんでしょうね。ただ「辛い」という声が聞こえ「この曲で、このメロディーでこれ歌う?」という声が聞こえ、あらためて書き直す。
いまライナーノーツ書きながら思い出して読み返したけど、うん、悲しい。
もっと悲しい曲で歌おう。そうして書き直していく中で、すごく思ったのは幸せな時の思い出ほど鮮明に思い出せちゃったりするのよね。
あの時こんな顔してたなーとか、この時あんな話したなーとか。
極度の幸せと、極度の悲しさは、思い出せちゃう率が高い。個人的には前者のが厄介。
圧倒的に時間で薄れていかない。笑えるくらい厄介だもん。
そりゃ歌に出来ちゃうよね。幸せな記憶が未来で悲しくなるボタンになるなんて、ひっどい皮肉だこと。
それでも馬鹿のひとつ覚えみたいに、また恋しちゃうんですけどね。
あーやだやだ。
HOWL BE QUIET
竹縄航太
〜「バーバラ」歌詞はこちらから〜
https://www.uta-net.com/song/270912/